コンテンツへスキップ

作品紹介

ヨハネス・フェルメール 《真珠の耳飾りの少女》

1665年頃 油彩、カンヴァス 44.5×39.0 cm マウリッツハイス美術館 © Mauritshuis, The Hague

大きな灰青色の瞳でこちらを振り返る《真珠の耳飾りの少女》。暗い背景に浮かび上がる少女の顔と、東洋的な青いターバン、耳元に輝く大きな真珠により、見る者は一瞬で引き込まれる。フェルメールが33歳の頃に描いた本作は、特定の人物ではなく性格やタイプを表現する「トローニー」と呼ばれるジャンルに属し、理想化された表情と異国風の装いは時代を超えた神秘性を湛える。色彩は青と黄色のみにほぼ限定されているが、青はラピスラズリから作られたウルトラマリンという非常に高価な絵具が用いられている。わずか数筆で描かれた真珠の輝きや、柔らかな光に包まれた少女の表情には、フェルメールの卓越した光の表現が凝縮されている。本作は1881年のハーグでのオークションに出品されるまで広く知られていなかったが、美術収集家デス・トンベによって購入され、彼の死後、マウリッツハイス美術館に遺贈された。今日、この作品は「オランダのモナ・リザ」とも称され、フェルメール芸術を象徴する一作として、今なお多くの人々の想像力を掻き立てている。

ヨハネス・フェルメール 《真珠の耳飾りの少女》

ヨハネス・フェルメール 《ディアナとニンフたち》

1653–1654年頃 油彩、カンヴァス 97.8×104.6 cm マウリッツハイス美術館 © Mauritshuis, The Hague

ヨハネス・フェルメールの初期の代表作で、風俗画によって名声を確立する以前の20歳代前半に制作されたと考えられている。中央には古典神話における月の女神・ディアナ、周囲には女神に付き従うニンフ(森の精)たちが、森の空地で穏やかに過ごす様子が描かれる。画面には安らぎに満ちた穏やかな雰囲気が漂い、温かみのある色彩が特徴である。本作はかつて、レンブラントの弟子ニコラス・マースの作品と考えられていたが、1885年の修復作業中に、偽造された署名の下から「JVMeer」というモノグラムが見つかり、フェルメールの作品であると判明した。また、明るい真昼の情景と解釈されてきたが、1999年から2000年に行われた保存修復により、画面右上の青空は後世の加筆であり、本来は夕景を思わせる暗褐色のトーンだったことが明らかになり、本来の姿に戻された。画家の初期様式を伝える重要な作品である。

ヨハネス・フェルメール 《ディアナとニンフたち》

レンブラント・ファン・レイン 《笑う男》

1629–1630年頃 油彩、金箔で覆った銅 15.3×12.2 cm マウリッツハイス美術館 © Mauritshuis, The Hague

レンブラント・ファン・レインは17世紀オランダを代表する非凡で多才な芸術家である。特定のジャンルだけを描く同時代のオランダの画家とは異なり、彼は風景画に静物画、聖書や神話の歴史画など幅広い作品を手がけ、とりわけ肖像画やトローニーを数多く残した。故郷ライデンで修業を積んだのち1625年から独立した画家として活動を始める。強い明暗対比を特徴とする独自の画風を確立し、1630年代にはアムステルダムで肖像画家として名声を高めた。本作は若き日のレンブラントが描いたトローニーの傑作で、男の豪快な笑いを自由で表現力豊かな筆致で描写している。金箔を貼った銅板という珍しい支持体や大胆な技法は同時期の他の作品にも用いられており、若きレンブラントが絵画表現の可能性を模索していた姿勢がうかがえる。この自由で大胆な技法は後年の作品にも通じる重要な特徴と位置づけられる。

レンブラント・ファン・レイン 《笑う男》

ヤン・ステーン 《老いが歌えば若きが笛吹く》

1663–1665年頃 油彩、カンヴァス 83.8×91.9 cm マウリッツハイス美術館 © Mauritshuis, The Hague

オランダの風俗画を代表する画家ヤン・ステーンは、秩序のないにぎやかな家庭の情景を描いた風俗画で広く知られているが、実際には多作で多才かつ博識な画家で、歴史画なども手がけている。本作《老いが歌えば若きが笛吹く》は、オランダの諺「老人が歌うように、若者は笛を吹く」を主題とし、複数世代の家族が音楽や飲酒、喫煙に興じる姿を描いている。バグパイプは放蕩や怠惰の象徴であり、背景の情景や鳥かごも寓意を含む。画中には画家自身の姿も登場し、悪習を含めた行為が模倣によって受け継がれていくことを、ユーモアを交えて示している。本作は1660〜70年代、ステーンが最も充実した活動を行った時期に制作された代表作のひとつで、力強い構図と細部に宿る人間味豊かな表現により、当時から傑作として高く評価されてきた。

ヤン・ステーン 《老いが歌えば若きが笛吹く》

エマヌエル・デ・ウィッテ 《想像のカトリック聖堂の内部》

1668年 油彩、カンヴァス 110.0×85.0 cm マウリッツハイス美術館 © Mauritshuis, The Hague

エマヌエル・デ・ウィッテは、17世紀オランダを代表する建築画家であり、教会内部を描いた作品によって高く評価されている。ロッテルダムやデルフトを経て、1651年にアムステルダムへ移住し、実在または想像上の教会内景画の制作に専心した。写実的表現と豊かな想像力を融合させた作風により、オランダの教会内景画の革新者の一人とみなされている。本作は完全に空想上のカトリック教会を描いたもので、壮大な建築や光の効果、教会内の人物描写が卓越している。17世紀のオランダではカトリック教徒の信仰が制限されていたことから、このような堂々たる聖堂は現実には存在せず、画家の独創性が際立っている。デ・ウィッテは顧客の宗教に合わせて作品を制作し、教会の雰囲気や光、人々の姿に深い関心を寄せていた。

エマヌエル・デ・ウィッテ 《想像のカトリック聖堂の内部》

パウルス・ポッテル 《水に映る牛》

1648年 油彩、板 43.4×61.3 cm マウリッツハイス美術館 © Mauritshuis, The Hague

動物画家として知られるパウルス・ポッテルは、28年という短い生涯に約100点に及ぶ多彩な作品を残した。とりわけ牛の表現に優れた才能を発揮し、細密な観察眼と卓越した技法で動物たちに個性を与えている。同じくマウリッツハイス美術館が所蔵するポッテルの代表作《牡牛》の翌年に描かれた本作は、牧草地で憩う牛たちの姿を、水面に映る反影とともに精緻に表現している。画面中央の枯れ木や、光を浴びる家畜、乳搾りをする女性や水浴びを楽しむ人々、馬車で移動する人物など、当時のオランダの農村生活が鮮やかに描写され、細部にまで物語性が込められている。動物たちの光沢のある毛並みから粗い質感までを描き分ける表現は、日常的にスケッチブックを持ち歩き、丹念な自然観察を基に作品を制作したポッテルならではの特徴といえる。人物や風景は控えめに配され、動物を主役とする構成が画面に静かな緊張感を与えている。制作過程における描き直しの痕跡からは、画家が構図の完成度を追求した姿勢もうかがえる。

パウルス・ポッテル 《水に映る牛》

マリア・ファン・オーステルウェイク 《装飾的な壺の花》

1670–1675年頃 油彩、カンヴァス 62.0×47.5 cm マウリッツハイス美術館 © Mauritshuis, The Hague

近年の美術史研究では女性の芸術家や収集家に対する関心が高まり、その再評価が進んでいるが、マリア・ファン・オーステルウェイクもその一人である。17世紀にヨーロッパ各地で高い名声を博した彼女は、花の静物画を専門とし、その作品はフランス王ルイ14世や神聖ローマ皇帝レオポルト1世など各国の王侯貴族に収集された。牧師の家に育った彼女の絵には、信仰や現世のはかなさが象徴的に暗示され、宗教的な意味が込められている。本作では、神の存在を象徴するヒマワリと、闇に結びつけられるケシ、欲望を表すヴィーナス(神への服従を示唆)が組み合わせて描かれる。鑑賞者に対してキリスト教的なメッセージを伝えるとともに、敬虔なプロテスタントであった画家の精神性を色濃く示している。タイムやトリカブトなど当時めったに描かれることのなかった植物が含まれているのも興味深い。

マリア・ファン・オーステルウェイク 《装飾的な壺の花》